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夏のカナディアン・ロッキー(2)
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森と湖と氷河の国のハイキング(北部)
  
 バンフから始まったロッキーの旅は、レイク・ルイーズ周辺のハイキングまでが(1)であった。 (2)は、レイク・ルイーズを出発してジャスパーまで国道93号線を230km北上することから始まる。 このルートはアイスフィールド・パークウェイと呼ばれ、コロンビア大氷原をはじめとして氷河と湖の見所が多い。

 ジャスパー周辺では、天使が羽根を広げたようなエンジェル氷河のあるマウント・エディスキャベルのハイキングが楽しみである。 ジャスパーから北西に進むとカナディアン・ロッキーの最高峰マウント・ロブソン3954mに達する。
 山麓のロブソン・ランチに滞在して、最後のロッキー・ハイキングを楽しむ。

この後、カムループスまで専用車で走り、そこから空路にてバンクーバー経由で帰国の途に着く。


 
夏のカナディアン・ロッキー(1)を合せてご覧下さい。   (2002年7月)
マウント・ロブソン
 
ルート図  赤い部分がカナディアン・ロッキー(2)
  

  
アイスフィールド・パークウェイ
レイク・ルイーズからジャスパーまでカナディアン・ロッキー中央の渓谷を行く230kmのアイスフィールド・パークウェイは、地上で最も美しいハイウェイといわれている。  
  
ロッキーのハイウェイの両側にネットが張られていることがある。これがないときは沢山の野生動物が車にはねられた。ところがネットを張るとハイウェイの両側の生態系が隔離されてしまった。そこでところどころに動物のための橋を設けているという。
  
クロー・フット氷河
  
                クロー・フット氷河
カラスの足の形をした氷河で、かつては3本の指があったが、温暖化で今は2本しか残っていない
  
クロー・フット山とボウ・レイク
かのマリリン・モンロー主演の映画「帰らざる河」の舞台となったボウ川はここから始まる
  
ペイト・レイク
  
ペイト・レイク  氷河から流れ込んだ水のため美しい青緑色をしている
  
    氷河湖の水がなぜ青緑色をしているかを説明するパネル

私が補足して説明すると次のようになる。 氷河から流れ込む水は、岩、砂、泥の細かい破片(粒子)を含んでいる。 一方、太陽の光は赤から青までのいろいろな波長の光からできている。 光が細かい粒子に当ると、波長の長い赤い光は影響を受けないが、波長の短い青や緑の光は散乱されやすい。(これをミー散乱という) このため氷河湖の水は青緑色をしている、という。
 
コロンビア大氷原
  
レイク・ルイーズからジャスパーへのアイスフィールド・パークウェイのほぼ中程にあるコロンビア大氷原は、面積325平方kmで、北極圏外では北半球最大の大氷原。 大氷原は、巨大な灰皿のような形で、その周りのタバコを置くところから流れ出る水が幾つかの氷河に当る。 この水は、北は北極海、西は太平洋、東は大西洋に注ぐ、まさに大陸分水嶺である。
  
左アサバスカ山、右アンドロメダ山、さらに右側にアサバスカ氷河がある
  
                アサバスカ氷河
コロンビア大氷原から流れ出す氷河の1つ。氷河の厚さは最大部で300m、長さは5.3km。1870年と比べると1.6km後退している。
  
駐車場から氷河の上まで行く氷河バス 沢山の氷河を見た人には珍しくない 氷河トレッキングをする人達
  
氷 河 博 物 館
  
    氷河の中から見つかった木片
炭素同位元素法で測定したところ8,000年前のものと分った。その頃は氷河期の後の暖かい時期で、ここは森であったと考えられる。
アサバスカ氷河は、カルガリータワーの高さ(191m)よりも厚い
  
アサバスカ滝
  
アサバスカ滝とカーケスリン山(2995m)
  

  
ジャスパー散策
  
カナディアン・ロッキー最大のジャスパー国立公園の中には、延べ1200kmのハイキング・トレールがあるという。 ここのジャスパー博物館には登山愛好家には興味深い記念品がある。 日本山岳会会報(1998年1月号)によると、1925年に槇有恒氏率いる日本山岳会登山隊がアルバータ峰初登頂を果たしたときに記念に残されたピッケルを、23年後に第二登した米登山隊が発見し、持ち帰ろうとしたが折れてしまった。 1965年に日本登山隊が再び登頂し、残された片割れを持ち帰った。 槇氏の初登頂の72年後の1997年にジャスパーで2つの片割れがぴったりと合体されたという。 残念ながら、博物館へは行き損じた。
  
ジャスパーで泊ったホテル ホテルから翌日ハイキングするエディス・キャベル山がよく見える
  
カナディアン・ナショナル・レイルウェイのジャスパーの駅には日に1本観光列車が通るという
  

  
エディス・キャベル・ハイキング
  
ジャスパーで人気のあるハイキングコース。 エディス・キャベルに因んだエンジェル氷河は、私が世界中で見た中で最も美しい氷河である。 キャベル・メドウの高山植物も最高に美しかった。
  
エディス・キャベル北壁が望まれるハイキングの出発点  エディス・キャベルは、第一次世界大戦のときドイツの捕虜を世話したため処刑された英国の従軍看護婦の名前である (説明板より)
  
この辺りは、ホワイト・マウンテン・ヘザー(イワヒゲの仲間)とレッド・マウンテン・ヘザー(ツガザクラの仲間)がカーペットのように美しい。 我々はこの山道を「ツガザクラ通り」と名付けた
  
針葉樹の中に沼が点在するキャベル・メドウ
  
ツガザクラ
Red Heather
アオノツガザクラ 黄色いツガザクラ
Yellow Heather
イワヒゲ
リュウキンカ リュウキンカ(花弁は5〜10) ウマノアシガタ ツクシ
シナノキンバイの仲間
(日本では黄色しかない)
スベリヒユ
Spring Beauty
リンドウの仲間 地衣類
  
運良くマーモットが顔を出した。 ネズミより大きく、猫くらいの大きさ。
  
ユキノシタの仲間   ハクサンイチゲの仲間 ナデシシコの仲間
ウラジロキンバイ エゾチチコグサ   シオガマの仲間
  
今日のお目当て、エディス・キャベル看護婦に因んだ 「エンジェル氷河」 を眺めながら昼食。
  
エンジェルが羽根を広げた形が素晴らしい。
かつてエンジェルの足は下の氷河湖につながっていたが、温暖化で途切れてしまったという。
  
針葉樹林を下山する
  

  
ロブソン・ランチ
  
カナディアン・ロッキーの最高峰はマウント・ロブソン3954mである。 ロッキーの西側を走る海岸山脈の最高峰はワディントン山4042mで、ロブソンよりも僅かに高い。 またカナダ最高峰はユーコン準州のローガン山6050mであるが、この山はアラスカの山と位置付けられている。

いずれにしろ、カナディアン・ロッキーを訪ねる旅ではロブソン山が最高峰である。 もっともロブソン山の登頂には日数と技術が必要なので、今回は残念ながら眺めるだけとなる。

マウント・ロブソン山麓ハイキングの拠点となるロブソン・ランチは、国道から4kmほど入った静かな林の中にログキャビンが点在し、カナダの開拓時代を偲ばせる。
  
静かなたたずまいのロブソン・ランチ
右手のマウント・ロブソン(3954m)はカナディアン・ロッキーの最高峰
  
牧場内に散在しているキャビンは2寝室で、山好きのご夫妻と一緒に泊った。キャビンの名は 「ビーバー」 寝室は2ベッドの簡素なもの。ところがこのログキャビンが、どこの立派なホテルよりも安眠できた。
  
メインロッジで、そろって朝食 食堂に掲げられた 「日本山岳会 アルバータ峰
初登頂 75周年記念カナダトレッキング」 の寄書
  
早朝のすがすがしい空気の中の至福のひと時
  
ランチ中どこにでもいる地リス ランチ(ranch)とは放牧場のこと。ここの牛は、アルバータ牛として評価が高いとか。 ロッジの庭に数羽のハミングバード(ハチドリ)がやってくる。ホバリングしながら蜜を吸うところを撮るのは、なかなか難しい。
  
みんなでビーバーを観察 中央の葦の塊がビーバー・ダム。ついにビーバーは現れず。
  
ロブソン・ランチの女主人、トミ子さん
かつてはSKDの舞台で活躍
ワーキング・ホリデイで働く2人のお嬢さん 力仕事を1人で引き受ける
ワーキング・ホリデイの青年
  

 
ロブソン山麓ハイキング
 
ロブソン・ランチを拠点にして、キニー・レイクまでの1日ハイキングを楽しんだ。 静かな森林浴と、キニー・レイクに影を映すホワイトホーン・マウンテンの絶景が、思い出深いハイキングとなった。 
 
全行程をガイドして下さったカナダ在住の岩田さん。植物にも詳しい、冬は犬そりガイドも。 ロブソン・リバーを渡る
 
ハイカーと乗馬の共存 心地よい針葉樹の森
 
鳥居のようなマークはピクニックテーブル
 
ブルーベリーの実 ベニバナイチヤクソウ キイチゴ 赤いオダマキ
ハナウドの仲間 ヒメシャジン フウロソウ  
ミズトンボ ゴゼンタチバナ ウメザサソウ イチゲイチヤクソウ
 
水辺に咲くキンポウゲ
 
ノイチゴ(俗称) バファロー・ベリー
熊の好物
リシリソウの仲間
White Camas
 
  ヒメシャジン
アカツメクサ サルオガセ Common Witch's Hair(魔女の髪の毛)
 
キニー・レイクに影を映すホワイトホーン・マウンテン

 
ロブソン・ランチを離れるとき、主人のトミ子さんとスタッフ達が、ラバウル小唄の替え歌の 「ロブソン小唄」 を歌って見送ってくれた。
  さらばロブソンよ  又来るまでは
しばし別れの    涙がにじむ
恋しなつかし    あの山見れば
松の葉かげに    北斗星
 
 
カナディアン・ロッキーを発つ日、マウント・ロブソン見納めの場所に来たとき、今まで雲に遮られていた山頂が、一瞬顔を見せてくれた。 泣けるほど嬉しかった。
  
マウント・ロブソンを見納めた我々は、専用車でカムループスへ向かい、そこから小型機でバンクーバーへ飛び、10日間のカナディアン・ロッキーの旅を終えた。
恵まれた豊かな自然と、それを守るさまざまな工夫、そして暖かいホスピタリティに接することが出来た旅だった。
  
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